おなかいっぱい、シアワセいっぱい

VOL.11「自己流・夏越の祓」


6月30日は「夏越の祓(なごしのはらえ)」。今年半年間の穢れを落とすため、神社に設けられた、邪気を祓う力が備わっているといわれる茅で作った大きな輪をくぐり、残り半年間の無病息災を祈願する行事の日だ。
(「夏越の祓」茅の輪くぐり/露 天神社<お初天神>にて撮影)


「夏越の祓」に食されるのは、氷を象った三角形の白いういろうに、邪気祓いの煮小豆をのせた「水無月」という行事菓子や、禊(みそぎ)の酒「夏越の酒」。

日々多忙で瞬く間に過ぎた半年間だったが、きっと様々な穢れが付いてしまっているであろう我が身、自己流・夏越の祓をすることにした。

行事菓子「水無月」に見立てて、白いあんぺいに黒豆煮をのせ、茅の輪に見立てた緑の魚そうめんを飾ってみた。好物の練りもので仕立てたのは、もちろん夏越の酒の肴として愉しもうという魂胆だ。


夏の風物詩「あんぺい」と「魚そうめん」は、鱧好きな大阪と京都ならではの冷やし練りもの。その白さも眩しい「あんぺい」は、生の鱧を使い、柔らかく練り上げたすり身を蒸したもの。面白い名前の由来は諸説あるが、室町時代からあるという「はんぺん」の変形とも。山葵をのせて醤油にチョンで、冷酒が進む。

ちなみに「魚そうめん」の由来は定かではなく、「夏場は練りものも そうめん仕立てにした方が涼しかろう」という先人の茶目っ気で生まれたのではないかと思われる。

そうそう、食べる前には、茅の輪をくぐる時に唱えるとよいといわれている唱え詞を―
『水無月の夏越の祓する人は千歳の命延ぶといふなり』

KITANOTOMOKO

Writer 北野智子

フードディレクター。唎酒師。
食べものとお酒を愛し、1日中食べ続けていたいほど食い意地が張っている。
日本の旬、歳時記、食の歴史・謂れなど食文化に興味が尽きない。
尊敬する人は、江戸時代の風俗・事物の書『守貞漫稿』の著者・喜多川守貞。
ほか愛するものはイタリアの食文化、食の本(蔵書は1000冊以上)、器やキッチンツールほか、雑貨&ステーショナリー(ともに食関連が特に)、旅、世界のBARなど。世界中のお酒を飲んでみたい。

表示価格は、ホームページ掲載時の消費税率による税込価格です。