LOVE! PORTLAND 11人目 土門 蘭さん(フリーペーパー『音読』)|ポートランドフェア2017

2017.4.19 更新
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京都で発行されている『音読』は、名前のとおり、音楽にまつわるフリーペーパー。ですが、昨年発刊された第13号では、ポートランドの出版文化を大特集。ポートランドと京都、それぞれに力強く活動しているインディペンデントな出版社や書店を取材していました。

ポートランドで新たな出版の可能性を見たという『音読』の土門蘭さんにお会いしてきました。土門さんは、新しい出版レーベルの立ち上げの話も進めているそうですよ。


土門蘭
1985年生まれ。『音読』副編集長。ウェブ制作会社の翠灯舎に勤務しながら、企画やライティングなどを担当。2017年、出版レーベル・文鳥社を設立。


―ポートランドを訪ねることになったきっかけは何ですか。

ポートランドがいろんな形で取りあげられて盛り上がっていたのもありますし、人口あたりの読書量がアメリカでトップレベルだということも知って、せっかくなので『音読』で取材をして、特集を組んでみようと思いました。『音読』は音楽をテーマにしていますが、フリーペーパーというメディアとして活動していくうちに、出版というキーワードに強く興味を持つようになっていたので。調べていくと、ポートランドって街が碁盤の目で、川と山が近くにあって、自転車もよく使われていて、独立系の書店があって…ってこれ、京都みたいやなと。その共通点も面白いなと思って。



―『音読』は、京都のウェブ制作会社、翠灯舎が発行しているフリーペーパーですね。

ポートランドに行ったのも、翠灯舎の研修旅行なんです。ウェブ制作で最近よく使われている「concrete5(コンクリートファイブ)」というオープンソースのシステムがあるんですけど、それが誕生したのもポートランドなので、その会社を訪ねるのもひとつの目的でした。

―コンクリートファイブはいまや世界中で使われているシステムだとか。

はい、ポートランドに本社のある会社です。とても気さくな方たちで、ビールもご馳走になりました。



―ポートランドで特に印象的だったことは何でしょう。

ちょっとでも道に迷ってそうな素振りを見せると、すぐに声をかけてくれて、道を丁寧に教えてくれますし、別れ際に「Enjoy this city!(楽しんでってね)」って言われるんですよ。ポートランドは自分たちの街で、そのことに誇りを持っているんだなって感じました。

―そこは、京都の奥ゆかしさとちょっと違う感じですね。

ですね。ポートランドってやっぱり新しい街だなと思います。自然とできた街というよりは、きちんと理念をもって人の手でつくられた街なんだなと感じました。

―出版文化という点ではどうでしょう。『音読』の特集でかなりポートランドの取材記事も書かれていましたが。

とにかく、個人が本やジンといった出版物をつくることをまったく恐れてない。とにかく、ごちゃごちゃ言わんと、つくろうぜ! って感じ(笑)。




個人の出版活動をサポートするインディペンデント・パブリッシング・リソース・センター(IPRC)は、まさに出版工場の趣き。「ここはジムのような場所だよ。ここにいると本を作る筋肉が鍛えられる」なんてことばも、『音読』の記事で紹介されていた。


『音読』をつくっていると「こんなのつくってすごいね」とたまに言われたりするのですが、ポートランドではいろいろな人が「つくりたいからつくってる」って感じで、個人の出版がすごくさかんなんです。誰にどう評価されるかよりも、つくることそのものをのびのび楽しんでいる雰囲気の方が強くて、取材しているとすごく励まされましたね。

―ポートランドでは、本づくりが決して特別なことになってない。

手づくり感の強いホッチキスで留めたジンでも、書店ではきちんとした本と並んで置かれていたりして、そういったところもよかったです。同じ「本」として、フェアに扱われている感じで。




世界最大級の独立系書店とされるパウエルズ。


―今年の2月、土門さんは、かもめブックスの柳下恭平さんと出版レーベル「文鳥社」の立ち上げを宣言されましたね。やはりポートランドでの経験は大きかった?

うーん、どちらかと言うと、そういう出版の形はポートランドという特別な街だから成立していることだなって正直思っていました、日本は出版業界も本屋さんも大変な状況で、自分で出版社をやるなんてとんでもないと思ってましたね。

―それがどうして「文鳥社」を立ち上げることに?

柳下さんと出会って、話を重ねていると、この人は本の力をあきらめてないと思ったんです。彼から「自分たちが読みたい本を作って、自分たちで世界に渡していく」というプリミティブな出版をしたいと思っていると聞いて、「私もそれをしたいな」と素直に思いました。私もこれまで何回もいろんな本に助けられて、本の恩恵を受けてきたのに、その恩を返さずに死んでいくのかと思ったら、やる・やらないの前にすでにあきらめているのが何だか情けなくて。それでその場で、柳下さんに「一緒にやりましょう!」って言いました。そしたら、「うん、やろう、やろう」ってトントン拍子に(笑)。


「文鳥社」をともに立ち上げた柳下恭平さんは、校閲の会社「鴎来堂」、「かもめブックス」という本屋さん、そして「ことりつぎ」という書籍流通まで手がけるなど、さまざまな形で本と関わっている。


―「文鳥社」ではどんなことをするのでしょう。

さっきの言葉の通り、自分たちがほんとに読みたい本をつくって売っていくことですね。まだ形にするのはこれからですけど、数百部という単位でも本という形にして、ちゃんと対価を得ながら確実に届けていきたいと思っています。やっぱり、ものをつくりだす人って尊いなぁって思うんです。編集者という立場で、そういう種みたいなもの、温泉みたいなものを守っていかないといけないし、それを広く人に伝えていきたい。
ポートランドでもうひとつ感心したことがあるんですけど、向こうのつくり手の方は、自分が温泉として世の中を豊かにしている存在なんだということをはっきりと自覚してるんですね。

―モノをつくる側の人間としての自覚。

そうです。だからこそ、その対価をきちんと得るべきだと思っている人が多いんですよ。私は、そのこともすごくいいなと思いました。経済活動に乗せていかないと、つくり続けることができませんから。

―これからの『音読』、そして文鳥社の展開、楽しみにしています。


*土門蘭さんと柳下恭平さんが「ポートランドフェア」の会場でトークショーを行うことが決定しました。ポートランドの出版文化、これからの出版についてのお話をゼヒ!4月27日(木)18時からです。



トークショーを終えてのメッセージ
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