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古さ自慢

私の裁縫道具は母から譲ってもらったものばかり。
鋼の裁ちばさみと竹の物差しは本格的な雰囲気が漂うので特にお気に入り。
生地屋で生地をカットしてもらう時、店員が使っているのはやはりこういう鋼のはさみと竹の物差しだ。
持ち手がプラスチックのはさみなど見ないし、透明プラスチックの定規も見ない。

母の裁ちばさみには「名匠 民三郎作」と彫られていて、まるで武士が持つ刀のよう。
そして竹の物差しには母の字で「1975 昭和50年2月吉日 求 清水」と書かれている。
私が生まれる前の年、母の旧姓。
昔の人はなんでも名前を書いて(私の両親だけだろうか?)大切にした。
お陰でこの物差しの古さに「おーっ…」と感心したり、私が40年使ったら80年物になるのか、など思いを馳せることもできた。

鋼のはさみは重たいけれどよく切れる。重さも利用して切るような感覚がある。
竹の物差しはちょっと曲がっているし目盛が2mm毎にしかないけれど生地の滑りが良い。
古いまま変わらず使われている物には理由があるんだということを体感できる。
私が大好きな「機能美」もある。

母くらいの世代の人は裁縫や編み物をする人が今より多かったのではないだろうか。
電車の中で大人の女性が編み物をしていたりするのを、子供の頃はよく見た。
今は母もほとんどしなくなっているので、私が実家へ帰る度、あれこれ持っていって良いか聞くと
「どうぞ」
とあっさり言うので、少しずつ私の手元に移動してきている。
私が色々と引っ張り出して持っていくのを母は楽しそうに手伝ってくれるので、多分私が使うのを喜んでいるんだと思う。
そう思って一つまた一つと裁縫道具をコレクションしていくのだ。

「ゆるりおうちぐらし」古さ自慢

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