おなかいっぱい、シアワセいっぱい

甘~い栗拾い

<VOL.28>
秋深まりし。
美味しい秋の味覚が列をなしてやってくるが、大好きな栗もその一つ。
この時季はお待ちかね、収穫したばかりの新栗をはじめ、
栗を使ったお菓子が続々お出ましになるので、さっそく“甘い栗拾い”へ。

コロンと可愛い「栗囃子(くりばやし)」。
新栗にグラニュー糖をほんの少しで仕上げた生栗きんとんは、
栗特有のひなたのような香りが立ち上がり、
名前の通り 囃し立てるように栗がホロホロほどけていく。
「秋だねぇ~」と思わずニッコリ。

見つめているだけでも嬉しくなる栗菓子たち。

上のは、ぷうんと香るバターの溢れるコクが美味しい「丹波栗フィナンシェ」。
中に詰まった丹波栗ペーストと白あんで作った栗あんとバターが相性バツグンで、
後を引く味わいの焼き菓子。

真ん中の新栗と砂糖だけで作られた「西木木(さいきぼく)」は、
心やすらぐ鄙びの香りと上品な甘み、
とろける栗の風味に、しみじみと感動してしまう。

そして下が、まさに栗!の「丹波栗グラッセ」。
丹波の里山の香り、ポクポクの食感―すべてが栗そのものだ。
新栗を渋皮ごと砂糖に漬けるだけで作られたこの菓子は、
創り手の、栗の風味を壊さないよう、そっと大切に扱う姿までが想像できる。

こちらは白い甘味をまとった栗菓子二品。

上の栗の甘露煮が丸ごと1個入った粒あん大福は、この時季だけの「近江大福 栗」。
近江産粳米(うるちまい)の香りと旨みのあるやわらか餅と味わう栗と粒あん―
気取りのない大福という菓子ならではの美味しさがある。

下は、栗と新栗の証・2016の焼き印が愛らしい、まん丸い「栗まろ」。
やわらかく蒸し上げられたつくね芋入りの上用の中に、
こしあんに包まれた新栗の甘露煮がコロリ。
さすが長く愛されてきた銘品ならではの、心がほっとする味わいだ。

洋菓子になった新栗も。

軽やかに焼かれたパイの中には、カスタードクリームと大きな新栗がゴロゴロ。
サクサク(パイ皮)、ポクポク(新栗)、トロトロ(カスタード)…シアワセなオノマトペのオンパレードである。

今年の嬉しく、甘い栗拾い。

風土と季節の恵みを、どうしたら自然に近い形と味で届けることができるだろうかと、
想いを巡らせ、心を配り、繊細な技を込める―
いずれの栗菓子も、創る人の真摯な想いが伝わってくる。

その真心を 目で、舌で、愛でて味わう。
栗を育てた里山の香りを聞く。
食感を楽しみ、移ろう季節に耳を澄ませて―
五感をワクワクさせて、秋の実り、いただきます。


today's item

「タンバフード」生栗きんとん栗囃子[丹波産新栗](1個)270円 ◎地下1階:洋菓子売場

「タンバフード」丹波栗フィナンシェ(1個)241円 ◎地下1階:洋菓子売場

「タンバフード」丹波栗グラッセ[新栗](1個)341円 ◎地下1階:洋菓子売場

「鶴屋吉信」栗まろ[新栗](1個)454円 ◎地下1階:和菓子売場

「ダンバフード」栗パイ[丹波産新栗](1個)324円 ◎地下1階:洋菓子売場


「たねや」西木木(2個入)648円[9月上旬~10月下旬] ◎地下1階:洋菓子売場

KITANOTOMOKO

Writer 北野智子

フードディレクター。唎酒師。
食べものとお酒を愛し、1日中食べ続けていたいほど食い意地が張っている。
日本の旬、歳時記、食の歴史・謂れなど食文化に興味が尽きない。
尊敬する人は、江戸時代の風俗・事物の書『守貞漫稿』の著者・喜多川守貞。
ほか愛するものはイタリアの食文化、食の本(蔵書は1000冊以上)、器やキッチンツールほか、雑貨&ステーショナリー(ともに食関連が特に)、旅、世界のBARなど。世界中のお酒を飲んでみたい。

表示価格は、ホームページ掲載時の消費税率による税込価格です。