おなかいっぱい、シアワセいっぱい

VOL.20「ベトナムスタイルの冷奴」


連日 蜃気楼が見えるほどの暑さである。昔から8月には、浴衣、夏祭り、花火、海水浴、風鈴、打ち水、すだれ、金魚鉢…などの「納涼」ツールがあり、身近な食べものでいえば、かつての“サラリーマン諸氏 夏の必食アイテム”ともいうべき、ビール、枝豆、冷奴であろう。
ふむ、ならばこの冷奴で「夕涼み」と、洒落てみることにした。

夏といえば恋しくなるのが、アジアン・エスニック料理だが、今夏は特にブームが来ている。私が好きなのは、料理に魅せられて何度か訪れたベトナムの味。程よいエスニック感と繊細な味付けで、たっぷりのハーブを多用するのがヘルシーで大好き。大のパクチー女子ということもあるが。

ベトナムではチープな食堂でもフォーを頼むと、パクチーやベトナムミント、ドクダミ、レモングラス、バジルなど、てんこ盛りのハーブがセットで付いてくるのが嬉しい。

この「ベトナムスタイルの冷奴」は、冷奴と一緒にパクチーや胡瓜、セロリなどを大量に味わえて、蒸し鶏および魚醤と唐辛子のタレがイイ感じのエスニックテイストを出し、爽やか&青くささが身体に涼を運んできてくれる、クセになる味わいだ。

これら食材の中で、ちょっとだけ手間がかかるのは蒸し鶏だけ。鶏の胸肉(ぶ厚い場合は2枚にそいで)に強めの塩とたっぷりの白胡椒を振り、タッパーに入れて日本酒をジャボジャボと浴びせかけ、フタをして冷蔵庫で2日程置く。
すぐに料理しない場合は、このまま冷凍室へ放り込んでおくと、週末などに使えて便利。

深さのある皿に鶏肉を並べてセイロで蒸し上げ、冷ました後ほぐす。
4~5cmに切ったパクチー、粗い千切りにしたセロリと胡瓜を混ぜ合わせ、ガラス皿にたっぷりと敷く。
その上に 奴に切った絹豆腐とほぐした蒸し鶏をのせ、タレをかける。

ナムプラー(ニョクマムの代用)大さじ2、酢 大さじ1、豆板醤(生赤唐辛子の代用)小さじ1、砂糖 大さじ2、ライム1/2の搾り汁を混ぜ合わせたタレをかけて。

ベトナムのホーチミン、フエ、ホイアンなどで食べ尽した料理のほんの一部。
いずれもハーブ、野菜がたっぷり。

ベトナムの人々のシンボルでもある“蓮”の葉で包んだ蒸しごはんは、蓮の香りがごはんに移り、なんともいえない美味しさだった。

KITANOTOMOKO

Writer 北野智子

フードディレクター。唎酒師。
食べものとお酒を愛し、1日中食べ続けていたいほど食い意地が張っている。
日本の旬、歳時記、食の歴史・謂れなど食文化に興味が尽きない。
尊敬する人は、江戸時代の風俗・事物の書『守貞漫稿』の著者・喜多川守貞。
ほか愛するものはイタリアの食文化、食の本(蔵書は1000冊以上)、器やキッチンツールほか、雑貨&ステーショナリー(ともに食関連が特に)、旅、世界のBARなど。世界中のお酒を飲んでみたい。

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