あのヒトと立飲み立食いの話 5
スタンダードブックストア・中川和彦さん
<古本と中古レコードフェス>

2019.7.23 更新
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今年4月、惜しまれながら閉店した大阪・アメリカ村の書店「スタンダードブックストア」。その店主・中川さんは、次なる店を「立ち飲み」併設にしようと企んでいるとのウワサ。本と立ち飲み!? 新しい店の計画を尋ねるとともに、中川さんの立ち飲み遍歴に迫りました。


スタンダードブックストア時代、併設のカフェでは著者らを招いたイベントを開催。ときに自身でも登壇していた中川さんは、よくお酒を飲みながら登場していた印象があります。

飲むのが好きなんは、たぶん、祖母が玉造でバーをやってたというのが大きいと思う。ばあちゃんは、女手ひとつで子供を10人くらい育てて、ビルまで建てたえらい人なんです。そのばあちゃんがつくったバーは、ちゃんとバーテンダーがおってね、小さい頃からそこのスツールにチョコンと座って、シェイカー振ってる姿を見てたらしいわ。

― そんな早くからの英才教育、刷り込みがあったんですね。

昔からよう言われてたのは、3歳の頃かな、親父が隣りで飲んでるビールを盗み飲みして、カウンターで踊りだしたって。将来は、絶対に酒飲みになると言われてました(笑)。

― そのとおりになりましたね。

せやねん。だから、ずっとバーには憧れ続けて、ミステリー小説とかにも出てくるやん? バーボンとかかっこええなぁって。大学時代に幼なじみに連れていってもらったバーが、ほんまに思い描いてたとおりの店で、ずっと通ってました。そこのマスター(渡邊国雄さん)、いまは島之内で別の店やってはる。最近はちょっと行けてないけど、かれこれ37年は通ってることになるかな。

― それだけ通ってるバーがあるというのも財産ですね。

スタンダードブックストアやってた時にも、店の端っこにバーをつくろうかって計画したこともあったけど、うまくできなくて。スタッフからも意味わからんって言われたな(笑)。

― 本屋にバーは未遂! 次に検討中の店では、立ち飲みを併設したいと考えていると聞きました。

まだわからんけど、前の店ほどの面積は持てないから、スタンディングで飲める場所をつくれたらええなというのが、まず思い浮かんだことで。それから、気楽に行ける立ち飲みって、めっちゃ本屋に似てるなって思うようになってきてん。

― 立ち飲み屋と本屋は似てる!?

本屋はひとりでも行ける、ふらっと入って何も買わなくても罪の意識もない。立ち飲みもそうやん。ふらっと入って、アテも食べんと1杯でパッと帰ってもいい。これくっつけたら、ぴったりちゃうのん(笑)。

― 気兼ねない業態どうしのカップリング。

そう。アメリカを旅して、本屋ってパブリックな場所やなとあらためて思うようにもなったけど、飲み屋のパブ(pub)、出版のパブリッシュ(publish)、どれもパブリック(public)という言葉から来てるんやってな。これは全部つながってるぞ!って。

― 本屋×立ち飲み、必然じゃないかと(笑)。最近ではショーアップされたような書店も出てきてますけど、まったく違う方向ですね。

オレはそっちはできひんな。気軽に誰でも入って来れること、本屋がそれをなくしたら終わりかなと思うので。

― 手ぶらでつっかけで入れるような街の本屋さん、立ち飲み付き。

そうそう。けど、さっき主婦の人と話してたら、「私は立ち飲み行ったことない、ハードルが高いんです」って言われて、でも、興味はすごくあると。自分自身はコテコテな立ち飲み屋に行くのが好きやけど、次の店つくるんやったら、飲まない人でも、女性でも、誰でも入れるようにせな。本屋ってあらゆるハードルを下げる装置やとオレは思ってるから。

― 言われてみれば、本屋さんにはそういうところがありますね。

そう、すっごい商売やなと思う。いろんな人が出たり、入ったり、話したり。そうやってコミュニケーションをはかるような環境づくりを新しい店ではやりたい、いまのところはそんな気持ちが強いな。


というところで、インタビュー前半が終了。
後半の前に、ちょっと中川家の朝・昼・夜ごはんを教えてもらいました。


朝食:そもそも食いすぎるので朝はあまり食べません。味噌汁だけ、納豆だけとか。この日は、前日に自分でつくったポテサラをトーストに載せて。これは、道頓堀にあったバー村岡でよく食べたアテです。ウスターソースを少しかけるとめちゃウマ!


昼食:自作のだし巻き、自作の出し殻つくだ煮、前夜の焼きなすとご飯、あと、きゅうりをごま油と醤油で和えたやつ。


夕食:豚冷しゃぶサラダ、かぼちゃの煮物、厚揚げを焼いたの、きゅうりと玉ねぎのサラダ、ブロッコリーの軸の千切りをごま油と醤油で和えたやつ、キノコを炒めて酢醤油で味付け、味噌汁。

中川さんにはスタンダードブックストア前夜の話も聞いた。これがドラマのような浮き沈みで大変だったので、整理してお伝えすると…
1987年、高島屋大阪店に入っていた書籍売り場を父から引き継ぎ、月商1億円に。出版業界の失速が明らかになってきた2000年前後には、書店を弟にまかせて、首都圏で飲食店に挑戦。チェーンのおにぎり屋をつくる計画は途中で頓挫。その流れで始めた市場内のお好み焼き店、川崎市内でのカフェレストランも長くは続かなかった。
そんな中川さんが大阪に戻って、2004年に退店する東大阪市の駅前書店を引き継ぎ、2006年にはスタンダードブックストアを立ち上げ。その際も併設するカフェは直営で手がけるなど、中川さんは、飲食への思い入れを実はずっと根強く抱えた人なんだと知らされた。
ということで、インタビュー後半へ―。


お好み焼き屋やってたときは、売値を100円にしてな。オレも馬鹿やったわ(笑)。一緒に店をやってた人らはみんな関西の人じゃなかったから、いっぺんにお客さんが来たら「中川さん、お願いします!」ってオレの出番。大きな鉄板が2枚あって、一度にお好み焼きが24枚焼けるんですよ。そういうのも自分でやってたな。

― お好み焼き屋のおっちゃん、似合いそうです。けど、一度に24枚焼くのは大変。

今、思い出してみたら、川崎でやってた店では、自分の持ってる本をちょっと店内に置いてみたりしてた。本と飲食を融合するって、その頃から自分のなかにはあったんやな。スタンダードのときも、カフェを直営でやることに逡巡は全然なくて。やっぱり自分が食べたくないもんは出したくないからね。

― スタンダードブックストアのカフェもこだわってました。

ホットドッグ出すのでも、添加物の塊みたいなんは使いたくないから、徳島の養豚からやってる会社を訪ねて、ソーセージをいちから開発して。ホットドッグって気軽な食べ物やけど、ちゃんとやったら全然儲からんねん(笑)。

― そんな中川さん、立ち飲み屋で必ず注文するものってありますか。

まず絶対に瓶ビール。あとはポテサラ、湯豆腐、だし巻きかな。シンプルやから、どういう志向の店なんか見えてくるし、どんな出汁使てるのかもようわかるやん。

― 瓶ビール派なんですね。

昔は、グラスを空けたら「まあまあまあ、どうぞどうぞ…」って日本人特有のやりとり、かっこ悪いなって否定してたけど、実はオレ、嫌いじゃなかった(笑)。やっぱりコミュニケーションとして最良の道具やんって今は思ってて。なんかカッコつけてたわ、オレ(笑)。


中川和彦さんによる新しい書店、現時点では発表できることはないけど、きっと楽しい店になるはず!期待して待ちましょう。



古本と中古レコードフェス
◎2019年8月14日(水)→20日(火)
◎8階催場<最終日は午後4時まで>
※京阪神~全国、ネット系まで、29の古書店が出店。中古レコードは19店舗出店。会場にはコーヒースタンドも登場。なお、スタンダードブックストアの出店はありません。

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2019.7.23 更新
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