LOVE! PORTLAND 9人目
吹田良平さん(著書『グリーンネイバーフッド』)|ポートランドフェア2017

2017.4.7 更新
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2010年、吹田良平さんが出版した『グリーンネイバーフッド』は、日本でのその後のポートランドブームを大きく牽引する1冊となりました。

「アーバンネイバーフッド」をはじめ、「クリエイティブシンカー」「エコエピキュリアン」といったキーワードを軸に、ポートランドのクリエイティブ企業や行政、住民の方などにも広く話を聞いた構成は、今もって最良のポートランドガイドであり続けています。

『グリーンネイバーフッド』発売からおよそ7年、今のポートランドとそれを取り巻く状況を吹田さんはどう見ているのでしょうか。


吹田良平
1963年生まれ。浜野総合研究所を経て、2003年、株式会社アーキネティクスを設立。商業開発、都市開発の構想策定を中心に、関連する出版物の編集、制作も行う。今年6月、新雑誌『MEZZANINE』を創刊予定。


―ポートランド関連の書籍を集めたコーナーには、今でも『グリーンネイバーフッド』が置かれています。2010年の発売以降、いろんな反響があったかと思いますが、特に印象的だったことを教えてください。

ありがたいことに、「私たちの街もポートランド化を進めたいのですが」という話をたまにいただくのですが、そこにはちょっと違和感を覚えるんです。歴史、文化、価値観、習慣、制度、そうしたいろんな背景が違うなかで単純に表層をなぞっても、実現は正直、難しい。そもそも、「ポートランド化」っていうこと自体が、すでに自分たちのローカルアイデンティティを捨てている。それが最もポートランドっぽくない(笑)。ポートランドを含む国内外の様々なところから、いろいろ吸収して、わが街ならではのオリジナルスタンダードをつくっていくべきですよね。

―それだけポートランドがひとつのキーワード、わかりやすい目標となっているという証しでもありますよね。

それはそうなんですけどね。

―あらためてになりますが、吹田さんが考えるポートランドの魅力ってどんなことでしょう

ポートランドを語るときに、よく話題になるテーマがいくつかあって、たとえば、コミュニティ論としての市民活自治、ガバナンス論としての行政の仕組みなどがあげられるんですが、僕が2008年にはじめてポートランドを訪れて、一瞬で魅了されたのは、都市再生の見事さ、質の高さなんですよ。

―都市再生事例として他にはないものだったと。

そうそう。都市再生は世界中で行われていますよね。その背景にあるのは、社会基盤の修繕とか補強、それから経済合理性、つまりビジネスのダイナミズムを生み出すこと。これってわかりやすくいえば、鳥の目・虫の目でいうところの鳥の目だけで再生を考えた血の通っていない都市再生。東京でも大阪でもそんな事例はたくさんあると思うんだけど。



ところがポートランドでは、そこにもう一つ別の視点が入ってた。センス・オブ・リビングとか、センス・オブ・ネイバーフッドといった虫の目の物差しが効いてたんですね。それが感動をもたらしたんです。

―職住近接の都会ぐらし、風通しのいい開放型のコミュニティが両立していることの驚きは、『グリーンネイバーフッド』を通して書かれていましたね。今のポートランドでもその状況は続いてるでしょうか。

ポートランド通たちが「パールはもう終わった。今は川向うのイーストサイドの方がおもしろい」って話をよくします。ある意味ではそうかもしれないけど、僕は、いまだにポートランドのパール地区が大好きなんです。今でも歩いていて刺激を受けます。わずか10年で成熟したチャーミングな都市を創出したんですよ。

―吹田さんがポートランドに感じる面白さの核心は、やっぱりそこなんですね。

そうですね。具体的にいうなら、それはこれからの都市のあり様っていうこと。これまでの「都市と郊外」っていう図式で言われてきた生き方って、オンとオフ、緊張と弛緩、創造と消費といった、二律背反で明確に区分された生活だと思うんですよ。そうじゃなくて、都市のただなかに住みながら、働いて、遊ぶ生き方。”働きながら遊び、遊びながら働く”、”消費よりも創造を優先した暮らし”。つまり、創造的なアーバンネイバーフッド。その実現こそがこれからの都市のあり様なんだと思いますし、それが実現できた稀有な例がポートランドのパール地区なんですね。



―『グリーンネイバーフッド』では、都市文明2.0、都会の幸福、ストリートワイズといった、都会ぐらしにまつわる表現も印象的でした。ポートランドのようなあり方、他の都市ではなかなか実現しないものですか。

東京、ニューヨーク、パリ、ロンドンのような大都市では難しいですね。どうしても地価が高いので、古い建物はコンバージョンするより、建て替えて高い付加価値をつけて回していかないといけない。だから、セカンドシティに可能性がある。古くから都心居住の習慣が残っているところもあるしね。そういう都市だと、コンバージョンがまだ効くんですよ。たとえば、コペンハーゲン、アントワープ、ウィーン、トロント、メルボルン、バンクーバーとか。そういう都市のただなかに、創造的な生き方を志向するビジネスマンが移り住んで、アーバンネイバーフッドをつくると、ある時点からクリティカルマス、質量変化が起こって、街がハプンし出すんです。



―日本だとどうでしょう。

創造的なアーバンネイバーフッドができ上がっているかどうかは別にして、全国各地で知人ががんばっているところ、帯広、札幌、青森、仙台、長野、静岡、大阪、神戸、岡山、島根、広島、福岡といった都市には、微力ながら自分としてもできる限りの応援はしたいですね。

―最後に、阪神百貨店での「ポートランドフェア」をどう楽しめばよいか、吹田さんからアドバイスがあれば。

ポートランドでいつも刺激を受けるのは、創造的な生き方をしている人が多いということ。消費中心ではなく、生産や創造を中心にした生き方、競争より共創を重視する暮らし方。互いにアイデアを出しあって、切磋琢磨しながら相互のレベルを高めたほうが楽しいじゃんっていう感覚。今回の「ポートランドフェア」には、ポートランドから多くのメイカーズがやって来るので、ぜひ彼らと可能な限り会話をして彼らの考え方や感じ方を実感してほしいですね。彼らは話しかければまず間違いなく対話してくれるはずです。なぜなら、彼らはアイデアの交換が大好きだからです。

―そういったところ、ちょっと日本のいわゆる職人イメージとは違っていますね。

そうですね。それは、彼らも何十年とその稼業をやってきた完成された職人じゃない、まだ発展途上や創造的試行錯誤の最中だからかもしれない。それでいえば、オレゴン、ポートランドという土地自体、歴史のないアメリカにおいても、さらに若い都市なので、まだ実験中だという意識もあるのだと思います。だから、来る者は拒まずで受け入れるし、開拓者精神でみんなで協力しあって、高めていこうという風土がある。世界クラスの美術館はないけど、これこそ真の創造都市でしょ。草の根創造都市。今回は、そうしたポートランドの風土にがっぷり四つで向き合える、極めて貴重な機会だと思いますよ。

*吹田良平さんは4月30日(日)にポートランドフェアに来場、14時からトークショーも開催されます。さらに詳しい「グリーンネイバーフッド」のこと、いまのポートランドについての話をぜひ会場で。





トークショー終了後のメッセージ
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