LOVE! PORTLAND 8人目
東野唯史さん(ReBuilding Center JAPAN)|ポートランドフェア2017

2017.3.31 更新
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空き家を解体したときに出る建材、古材をリサイクルして販売しているポートランドの「ReBuilding Center」。これを、日本の長野県・諏訪で始めた方がいます。

ゲストハウスをはじめとする、さまざまな建物のリノベーションを日本各地で手がけてきたmedicalaの東野唯史さん。仕事を引き受けるとその土地に住みこみながら、多くの人を巻きこんで空間をつくっていくという、その独特なスタイルでも話題を呼んできた東野さんが2016年秋、「リビルディングセンター ジャパン」を立ち上げました。

東野さんは一体、ポートランドで何を見たのか。どうして今、リビルディングセンターなのか。
ポートランド州立大学とのプロジェクトを進める京都・龍谷大学のコーディネートのもと、下諏訪のリビルディングセンターを訪ねて、東野さんにお話を伺いました。


東野唯史(あずのただふみ) 
1984年生まれ。2014年より妻の華南子さんと空間デザイナーユニットmedicalaとして活動開始。「Nui.」「萩ゲストハウスruco」「マスヤゲストハウス」「hotel aiaoi」など、全国に居心地のいい空間づくりを行う。2016年、ReBuilding Center JAPANを設立。「ReBuild New Culture(リビルド・ニュー・カルチャー)」という理念のもと、古材を再活用する文化を広めている。


―東野さんがポートランドを訪ねたのはいつの話ですか。

2015年ですね。僕ら夫婦で、地方のゲストハウスをつくったりしていると、まちづくりの動きに関わることも多くて、そういった現場で話をしてるとポートランドが話題になることが増えてきました。「東野さんは当然行ったことあるよね」くらいの感じで言われるから(笑)、いよいよ行っとくかと。新婚旅行として3週間くらいアメリカの西海岸へ行くことにして、そのタイミングでポートランドも訪ねることにしました。

―では、ポートランドの「リビルディングセンター」にもその旅行で?

そうです。ただその時は、「Salvage Works」「ReClaim it」とか、シアトルの「Second Use」とか、いろんなサルベージショップを巡ったんです。話は前後しますが、もともと僕は日本にもっと気軽な古材屋さん、サルベージショップがあればいいと思っていたんですけど、そしたらポートランドのブームに乗っかって、いろんな情報が入ってきて、リビルディングセンターのことも知りました。なので、ポートランドに行くんだったらという感じで、向こうのサルベージショップをかなり見てまわりました。




東野さんが見たポートランドのサルベージショップ。


―リビルディングセンターだけが目的ではなかったんですね。

だけど、行ってみたらリビセンが断トツによかったですね。かっこいい古材をまとめて扱ってるから、プロとして使いやすいのはサルベージワークスかもしれない。ところがリビセンでは、何に使うのかよくわからない部品まで売っているんです。つまり、そこにも価値を見出してるわけで、どこかに無駄にせず再利用できる人もいるだろうって懐の深さみたいなものを感じました。しかも、値段も全然ついてない! いくつかレジに持っていったら「これは1ドル、これはフリー」って、無料のものも結構ありましたね。

―ほどよくゆるい感じを受けますね。

といっても、店づくりから看板、スタッフの雰囲気まで、ちゃんと地域に根づいてる場所という印象も受けました。おばあちゃんがひとり来て、古材を買って帰るような感じ。それで日本に帰ってから、リビセンの名前を日本で使わせてもらいたいってメールを入れたら、すぐに「OKー」って(笑)。

―これまたいい話です。

もちろん、ちゃんと日本の状況(空き家の増加、その取り壊しが進行していること)やこちらのやってきたことも伝えましたけどね。僕がこれまで古材を使ってつくってきた空間とか、リビセンのTシャツを来て現場に入ってる写真とかも添付して(笑)。そしたら、すごく喜んでくれました。




諏訪のリビルディングセンター、オープンに向けた改装の様子。東野さんの現場はとにかくいろんな人が出入りするのが特徴的。


―空間をつくるという東野さんのこれまでの仕事に対して、日本でリビルディングセンターを立ち上げることは、また違った挑戦だと思います。どうして東野さんがそこに踏み出したんでしょう?

結局、このまま待っていても、そういった場所を立ち上げる人が誰も出てくる気がしなかったんですよ。アメリカと違って、日本はDIYカルチャーがそこまで浸透してないので、そのハードルを下げるために下諏訪のリビセンではカフェを併設しました。つまり、古材を集めるスキルがあって、その活用方法を提案して実際に施工ができて、カフェも運営する…ってことをまわせる人がどこにいるのか。専門家を集めたらやれますけど、それだと人件費がかかりすぎて大変。だけど、僕と妻のふたりがいれば、そこはだいたいクリアできるので、あとは、気持ちのいいスタッフがいればできそうだなって。



―確かに、リビルディングセンターはいろんな領域をまたいだ施設ですね。東野さんのユニークなところとして、空間設計でありながらカフェや店といった場所の力をよく熟知されていることもあると思います。

店を立ち上げたりマネジメントすることに関しては、僕よりも妻の華南子のほうがずっと考えてるとは思いますけど、僕らmedicalaとして、さまざまな店の立ち上げに何度も関わってきました。僕らは、これまでずっと、収支計画や実現したいビジョンなどもすべて話を聞いた上で、店の空間をつくってきたんですね。


改装中のまかない飯は華南子さんの担当。オープン後のカフェメニューにもつながっている。


―その経験値の蓄積はかなりのもの。

個人的なことをいえば、栃木の「SHOZO CAFE」の影響は大きいですね。1軒の店でこれだけ街が変わっていくんだというのを実際に見ていましたから。どうしてもひとつの店の発信力では限界があるので、いい店の周りにまた面白い店ができて…って、その街として発信力を上げていかないとやっぱり経営的にもしんどくなるんですよ。

―東京・蔵前のゲストハウス「Nui.」からはじまって、medicalaで手がけたスペースはその後も人が多く集まる場所になっています。いいお店の条件って東野さんはどう考えていますか。

お店の人がきちんとビジョンを持って、そこに向かけてきちんと考えているか、表現できているかどうか。些細に見えることでもそこで伝わるものがあるので、すべて積み重ねだと思います。あとは、ご近所さんとどう関わるかですね。ご近所さんには元気よく挨拶をして、ちゃんと店の周りを掃除して、雪かきにも参加して、回覧板をまわしながらお話をして。




リビルディングセンタージャパンの1階はカフェ。カフェの窓から古材ショップが見えている。


―当たり前のことだけど、その街にきちんと溶け込んでいくこと。

そうそう。ポートランドってこれはリビセンに限らずに、街全体でみんなすごく挨拶してくれるんですよ。横断歩道にいると必ず車が止まってくれますし。結局、ポートランドでいいなと思ったことって、ものすごく新しい何かというわけじゃなくて、当たり前にそうだったらいいなと思ってることが、多数派になってる街だということ。日本だとそれがまだまだ少数派なんです。

―ご近所づきあいという身近なことから、DIYカルチャーや古材を再利用するということまで、意識の違いが大きいと。

それがスタンダードであることが、やっぱりとても気持ちいいんです。僕らがリビセンを立ち上げて、ビジョンとしては見えていても、実際にそれが一般に広く浸透していけるかといえば、まだ10年20年はかかることなので。ポートランドでは、築100年以上の建物を解体するのに重機を使ってはいけないという条例が昨年できました。今、ポートランドへの人口流入が増えているのに、建物を壊すコストを上げるような条例をつくるってすごい判断ですよ。その結果、古い建物の再活用に知恵を絞ったり、取り壊す以上はその資源を循環させようって頭を使いますから。


2階にはとにかくさまざまなものが「レスキュー」されている。


―ポートランドは住民と行政それぞれの意識がいいレベルにあるように見えますね。日本に廃材利用の文化を根づかせる、広げていくためにこれから考えていることはありますか。

日本の建築関係の業界って閉鎖的なところがありますけど、もっとオープンにしていきたいとは考えています。たとえば、古材って扱いづらいところがあるので、古材を使ったテーブルのつくり方のノウハウなんかでも独占しがちなんだけど、僕らとしては古材施工マニュアルみたいなものをゆくゆくはウェブで公開したいと思っているんです。

―つまり、必ずしも諏訪のリビルディングセンターまで来なくてもいいと。

そうです。うちで古材を買わなくても、近所の解体現場で古材をレスキューして使ってもらえばいい。そういう仕組みがつくれたらいちばん気持ちがいいなと。リビセンでやってるようなことを、みんながどんどんマネして、もはや古材なんてどこでだって手に入るからという世の中になれば、僕らとしては本望だから。そうなったら、会社を閉じて、次のことをやります(笑)。





―DIYや廃材利用が当たり前の文化になるって、そういうことですよね!ちなみに、東野さんは「レスキュー」という言葉を使われますね。古材のレスキュー、廃材のレスキュー。

業界的にはサルベージというのが一般的だけど、宝探し感覚というよりも、もったいないものを見つけて救うという意識のほうが僕は強いので。あと、古材を扱いはじめて気づいたのは、これ、家主さんの気持ちもレスキューできるんですよ。長年使ってきた建物を解体することに後ろめたさを感じている家主さんも多くて、資源を循環させるということで、そうした人たちにもすごく感謝されるので。

―家主さんだって喜び勇んで、古い建物を壊しているわけじゃない。

そうですよ。うちのリビセンもそこまで広くないし、人手も足りないので、まだそんなにレスキューには行けてないんです。だから、これからはレスキューした古材、廃材を売るための仕組みをさらに整えていきたいですね。


*日本に「ReBuild New Culture」を浸透させるために、諏訪からコトを起こした東野唯史さん。「ポートランドフェア」にも4月29日(土・祝)に来場、14時からトークショーを行うことが決定しました。龍谷大学の田中友悟さんが聞き手を務めます。




トークショー終了後のメッセージ
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